公益社団法人諏訪圏青年会議所 理事長所信

公益社団法人 諏訪圏青年会議所 
2019年度理事長 丸茂 大介

はじめに

 私たちが活動する諏訪圏域は、諏訪湖や八ヶ岳を抱く自然や太古の昔より続く歴史をもつ魅力あふれる地域です。その自然に育まれた文化は、古くは紀元前までさかのぼり、日本有数の縄文文化が栄えた地域でもあります。和田峠より大量の黒曜石が産出され、交易が行われ、湖周、八ヶ岳山麓に数多くの集落が出現し、この地域の文化の源となりました。その後、文化の中心軸は、諏訪大社を中心とした諏訪湖周辺に移り、諏訪信仰の総本社として栄えました。江戸時代には、内藤新宿(東京)から下諏訪までを結ぶ甲州街道と日本橋(東京)から京都を結ぶ中山道といった江戸幕府が整備した五街道の2つが交わる交通の要所として発展しました。明治時代に入り、製糸業が発展していきますが、その発展の一因も交通の要所であったことにあり、戦前に開通した中央線や戦後の中央自動車道開通等により製造業、観光業の発展へとつながっていきました。

 この諏訪圏域の自然、歴史、利便性等の強みを背景に圏域経済が成長していく中、1962年に岡谷青年会議所が誕生し、続いて1968年に茅野青年会議所、諏訪青年会議所が、1978年には下諏訪青年会議所が誕生しました。ふるさとの為に何ができるのか、仲間と切磋琢磨し、リーダーシップを発揮し、自己成長を図ることで、青年会議所の諸先輩方はこの地域の発展に寄与されてきました。その活動は現状に甘んじることなく、未来を見据えて来るべき地域間競争に勝ち残っていく為に、2000年に諏訪圏域を活動エリアとする社団法人諏訪圏青年会議所が創立され、当時最も諏訪圏域の活性化を図り、将来的な発展が見込める手法である6市町村の合併を推進してきました。しかし、2004年に行政合併が破たんし、行政合併を前面に押し出したまちづくりではなく、創立の精神である「諏訪はひとつ」の想いの元、有機的な広域連携を図るまちづくり運動を展開し、現在に至っております。諸先輩方が危惧された問題は顕在化しつつあり、人口減少や高齢化社会といった諸問題に喫緊の課題として直面せざるを得ない中、地域間競争も激化しており、1行政単位では太刀打ちできない状況となっております。

 行政区分に捉われることなく、未来を見据えた行動を起こせるのは、諏訪圏域を1つのエリアとして運動を展開している諏訪圏青年会議所だけです。かつて諸先輩方が、圏域に起こる問題に立ち向かったように、私たちも英知と勇気と情熱をもって事に当たり、諏訪圏域の未来が夢ある住みやすい自立都市となるように、運動・活動を展開していきましょう。

~「まち」にとって必要不可欠な存在である為に~

 「まち」が消滅する時とはどのような時でしょうか。もちろん、住む人がいなくなれば、消滅しますが、「まち」のことを考える「ひと」がいなくなった時に「まち」の消滅は始まるのだと思います。今から約250年前にあたる江戸時代の仙台藩領内の宿場町、吉岡宿。仙台藩の宿場町には宿場町間の物資の輸送を行う伝馬役が課せられており、伝馬役にかかる費用は全て吉岡宿の住人が負担して町は困窮し、破産者、夜逃げ者が相次ぐ有様でした。この宿場町を救う為に、造り酒屋の当主・穀田屋十三郎をはじめとした数名によって、吉岡宿の有志で銭を出し合い藩に貸して利息を取り、それを伝馬役に使うという計画を立てました。紆余曲折を経て、この計画は成功し、吉岡宿は消滅することなく存続することができました。磯田道史氏原作の「無私の日本人」という書籍で紹介されている実話です。「まち」の未来を憂い、憂うだけでなく行動に移すという「まち」のことを真剣に考える「ひと」がいたことによってこの「まち」は生き残りました。

 自分のまちに対してどんな問題があるのかを意識し、何ができるのかを考え、行動できる人財がどのくらいいるのかによって、そのまちの未来は決まるといっても過言ではありません。諏訪圏青年会議所は諏訪圏域の明るい豊かな社会の実現を目指す有志の組織です。私たちの仲間が増えていくことによって、まちのことを考える人財が増え、まちの活性化へと繋がっていきます。また、新しい会員の入会は、組織に新しい風をもたらし、現会員にとっても新しい出会いによる新たな発見があります。圏域発展の為にも、諏訪圏青年会議所の為にも会員拡大は必要不可欠であり、今年度も推進していきます。

 「まち」の発展には、「まち」のことを考える人財が必要ですが、「まち」のことを考え、行動する為には、地域においてリーダーシップを発揮し、持続的に発展可能な解決策を提示できる必要があります。青年会議所では、会員の自己成長を目的の1つにおいており、青年会議所運動・活動を通じて、役割に応じた実践的な能力開発の機会を得ることができます。この実践の機会をより効果的なものにする為には、知識や方法を学ぶ必要があり、会員育成の機会を設けます。さらに、圏域経済発展の為には、会員のみならず、圏域経済人の成長を促すことによって、相乗効果を生みます。会員の能力開発を推進する研修を設けるとともに、圏域住民で学ぶ意欲のある経済人へも学びの場を提供することで、圏域の人財の成長を図ることができ、圏域経済発展はより効果が発揮できると考えます。

 青年会議所最大の財産である「ひと」を増やすこと、そして「ひと」を育成する活動を行うことは「まち」のことを考える人財の増加と育成になり、諏訪圏域の未来の発展につながると確信しております。

~多様な個性が発揮できる組織~

 私たちは、諏訪圏域の未来の為に集った青年です。その背景となる職業や年齢、人生経験は多種多様であり、組織としての強みです。会員の個性がぶつかりつつも、打ち消してしまうのではなく、お互いを尊重し助け合うことで、組織としての力が発揮されます。ただの集まりではなく、組織として機能するには3つの要素が必要です。組織目的の有無、会員同士の貢献意欲、情報共有です。これら3つの要素を青年会議所では、義務出席指定会合である総会、例会及び青年会議所活動の根幹を担う委員会、部会、局といった会議体で機能させています。総会は青年会議所の重要事項を決定する会議であり、例会は学びの場であるとともに会員相互の意見交換や友好を深める場でもあります。また、会議体では、義務出席指定会合や事業等を計画し遂行する過程を通じ、切磋琢磨し、仲間としての絆を深めることができる機会でもあります。これらの会議を通じて、組織としての力が発揮されるとともに、会員は経験を積み重ねていきますが、前提となるのは参加することです。残念ながら、職場、家庭、他団体の活動等の都合により参加できない会員が存在することも事実です。「JCもある時代」といわれ、1人の人間が何役も請け負うような時代において、組織運営の方法も変化させていく必要があります。時間は価値創造の原価であり、会員の時間に配慮しつつ、青年会議所運動・活動へ関わる意義を会員それぞれが見出す為に先の3つの要素を強化した組織運営を模索していきましょう。より多くの会員が、会議へ参加できるようになることによって、実りある経験を得られ、充実した人生の一部として青年会議所運動・活動が活かされることを期待します。

 また、私たちの活動は、私たちだけが知っていればよいというものではありません。広く圏域住民に知っていただき、興味関心をもち参加していただくことによって、住民を巻き込んだ運動を展開することができます。圏域住民が私たちの情報を得る入口として、数多くの媒体がありますが、諏訪圏青年会議所では、主にホームページやSNS、マスメディアによるものです。「JCもある時代」といわれるように他団体が数多く存在し、情報が氾濫している時代だからこそ、青年会議所の独自性が伝わるような時代に合った的確な広報方法について模索し、圏域住民が興味関心を抱くような広報活動を行っていきます。

~諏訪圏青年会議所だからこそできるまちづくり~

 2015年からスタートし、2020年までに基本目標を設定した「地方創生」は、折り返し地点を過ぎ、成果を出すべき時期に差し掛かっております。現状は、政府が設定したKPIの120件中、86件が、「目標を達成しているもの及び実績値が当初の値より上昇しているもの」としていますが、重要な課題である東京への人口の一極集中は是正されておらず、地方への新しい人の流れをつくることへのさらなる強化が求められています。諏訪圏域も例外ではありません。2015年には、諏訪圏域の総人口が20万人を割り、このままの状態では、2040年には、約15.5万人になり、高齢化社会の加速と生産年齢人口の減少による経済の縮小は免れません。

 地域間競争に勝ち残るとは圏域経済全体規模での発展のことであり、圏域外から流入するマネーを増やすこととこの圏域に多くの人を呼び込むことが必要です。その為には、圏域の独自性をいかにして際立たせ、伝えていくかにかかっています。私たちの住む諏訪圏域には、八ヶ岳、諏訪湖をはじめとした豊富な自然や縄文文化、諏訪大社といった太古の昔から連綿と続く歴史を持っています。また、その歴史的背景により発展した製造業や観光業といった多くの産業が生まれている地域でもあります。これらの地域としての魅力は、行政枠に縛られる必要はなく、歴史的、文化的にも近しい6市町村が1つのエリアとして持つ独自性として強化していく必要があります。まずは、諏訪圏青年会議所で打ち出してきた諏訪圏域の独自性を再認識し、強化していく方法を考えるとともに、周知していく方法も模索していきましょう。ブランドは土地に宿ると言われますが、圏域住民に認識していただき、支持を得ることで、ブランドとして確立していきます。それと同時に、圏域外の方々へも情報発信していくことにより、相乗効果が得られます。「諏訪はひとつ」という想いをもって、行政枠を超えた活動をしている青年会議所だからこそ、諏訪圏域を俯瞰して各行政や他団体を巻き込んだ独自性の強化と周知をしていくことができると考えます。

~思いやりと郷土愛を育む~

 核家族化や晩婚化といった社会構造の変化、ITの目まぐるしい発展に伴い、子供たちの置かれている環境は、私たちの子供の頃から大きく様変わりしてきています。

 インターネットが手軽に使える環境が整ったことによって、知りたい情報をすぐに手に入れることができるようになり、直接体験しなくても間接的に知ることが容易にできるようになりました。また、メールやSNSの便利なツールが欠かせない日常生活を送っており、すぐに簡単に他者とコミュニケーションすることができます。ディスプレイに写る文字や画像、動画から、すぐにお手軽に答えらしきものを得ることができることで、思考の入る余地は少なくなり、想像力を働かせる機会が失われ、結果として他者の感情や状況を思いやる経験が少なくなります。思いやりの欠如した人間は、自己中心的な考えに支配され、対人関係の構築に支障をきたし、社会において孤立する傾向にあります。人間一人では生きていけません。豊かな人生を歩むには、家族、友達と良好な関係を築くことは重要な割合を占め、その根底にあるのは、他者に対する思いやりの心です。

 子供たちの人格形成や考え方に大きく影響を与えるのは、他者との直接的な関わりを通じた体験です。特に対人関係の構築能力については、実際にFace to Faceでお互いの感情がぶつかることで、たくましさを身に付けるとともに、他者の心に対して慮ることを覚えていきます。感受性の高い子供の頃だからこそ、このような経験を積むことは重要だと考えます。私たちが実現を目指す明るい豊かな社会を構成する人々は、自分のことだけを考えている人ではなく、他者を思いやり、支え合うことができる人々が多く住む社会です。諏訪圏域の未来を担う子供たちが思いやりの心を磨けるような直接体験をしていただく機会を設けることにより、人間的に成長することを強く願います。

 また、子供たちを取り巻く環境の変化により、自分の住む地域の良さに目を向けることよりも、タブレットやスマートフォンのディスプレイを見ていることのほうが多いのではないでしょうか。諏訪圏域には、八ヶ岳や諏訪湖をはじめとした豊かな自然や歴史、文化といった多くの魅力があります。これら魅力のどれか1つでも触れ、体感することによって自分の住むまちに興味をもつようになり、郷土に対しての記憶となります。郷土での楽しい記憶が1つでも多ければ多いほど、郷土への愛着がわき、進学や就職、結婚等の人生の節目でこの圏域を離れることがあっても、何かのきっかけで戻ってくる要因の1つになりうると考えます。

 この圏域の未来をゆくゆくは支えていく子供たちに、郷土愛を育むような事業を行うことも、明るい豊かな社会の実現を目指す青年会議所の活動として行っていくべきであります。

~創立20周年に向けて~

 2000年に岡谷、諏訪、下諏訪、茅野の4LOMが統合し、社団法人諏訪圏青年会議所が誕生しました。圏域に起こる地域間競争の激化や少子高齢化といった諸問題を危惧し、その対策として行政合併を推進する為に、6市町村合併に先駆けて、青年会議所として合併を実行しました。しかし、2004年に6市町村における行政合併が破たんし、15年の月日が経とうとしております。その間、私たち諏訪圏青年会議所は、6市町村を共通のふるさととする「諏訪はひとつ」という創始の想いを共有し、有機的な広域連携を図るまちづくりに邁進してきました。いよいよ来年の2020年には、諏訪圏青年会議所創立20周年という節目を迎え、また新たな一歩を踏み出していくことになります。その為に、諏訪圏青年会議所が考える2020年以降の諏訪圏域における「まち」としての方向性について、検討し準備を進めていく必要があります。2017年、2018年と「諏訪はひとつ」という想いをもう一度見つめ直し、行政合併の可能性と別の方法での「諏訪はひとつ」のこれからの在り方について例会を開催しました。これまで行ってきた内容をもとに、引き続き「諏訪はひとつ」の在り方について調査・研究を行い、会員に周知します。

~地域に根差してこそのJC~

 各地域で運動・活動を展開していた4LOMが諏訪圏青年会議所へと統合され、19年が経ちました。6市町村を共通のふるさとと捉え「諏訪はひとつ」の創始の想いを具現化する為に、6市町村を1つのエリアとして運動・活動を展開しております。しかし、広域的な活動をするだけでよいのではなく、2010年に諏訪圏青年会議所が発表した2010年代運動指針に「地域と広域の共存共栄」と記載されているように、地域の活性化が広域の活性化になり、広域の活性化が地域の活性化になるような活動する団体が目指すべき姿です。部会の存在意義は、地域に根差した活動です。広域的な課題の解決の糸口が各地域の課題解決方法の中に存在する場合もあります。各行政により各種会議に参画を求められる際には積極的に情報交換をしていきます。また、2019年度は、岡谷市、諏訪市、茅野市、原村の各首長の選挙が行われる予定です。各地域のリーダーである首長の選定は、各地域の未来の選定でもあります。各地域住民が自分の住む地域の未来について考えるとともに、立候補者がどのようなビジョンをもち、地域を活性化していくのかを見極める為にも、公開討論会を行う必要があると考えます。また、各地域は歴史的、文化的に近しいですが、それぞれに特色ある魅力があります。各々の特色を生かした活動を展開していく中で、地域住民の方々や諸団体との関係を築き、地域においてさらに頼られる存在になることも重要です。諸先輩方が築かれてきた地域における信用を損なうことなく、地域の活動に参画することや地域活性化を通じて、地域も私たちも成長していきましょう。

~青年会議所運動・活動に欠かせない存在~

 諏訪圏青年会議所は、2011年に公益法人格を取得し、公益社団法人諏訪圏青年会議所としてスタートしました。公益社団法人であることで、社会からの信頼性はさらに増し、その期待に応える運動・活動を行っていく必要があり、その為には運動・活動を具体的に決定していく理事会の運営を適正に行わなければなりません。理事会はロバート議事法に則って進行されることにより、公平に意見が出せるような会議環境が整えられ、協議・審議にかける議案の精度が向上し、より良い事業や例会を形作ることへと繋がっていきます。

 また、私たちが展開する青年会議所運動・活動に必要不可欠な事業費は、会員の会費から成り立っています。公益社団法人としての信頼性を保ちつつ、適正な予算執行がされる必要があります。公益社団法人の多くは、予算準拠主義によって予算編成がされ執行されていますが、諏訪圏青年会議所も例外ではありません。しかし、予算ありきによる予算消化の為の事業等にならないように、事業内容を費用対効果に鑑み事業等を審査することによって、より効果的な予算使途を検討できるような運営を行っていきます。

 また、諏訪圏青年会議所の活動基盤は、理事会の運営等を担当する事務局や予算執行が適正に行われるか審査する財政局によって主に作られています。会員にとって、青年会議所運動・活動へ参加できる活動基盤となるのは、職場の方や家族等の存在です。職場においては、青年会議所活動の為に仕事の調整をお願いすることもあるでしょう。また、例会や事業の準備の為に主に夜間の時間帯を使い、事業や大会は土日で開催されることが多い為、家族と過ごす時間を割かざるを得ないことも事実です。会員が活動を継続していくには、職場や家族等の感謝すべき相手の理解は必要であり、感謝の意を示すとともに、青年会議所運動・活動を理解していただく機会を設けることが必要だと考えます。

~GET THE OPPORTUNITY ~考動(こうどう)しよう!諏訪圏(ふるさと)の未来の為に~

 青年会議所には多くの成長できる機会がありますが、その機会のことを「Chance」ではなく、「Opportunity」と言います。「Chance」は、偶然もたらされた機会であり、「Opportunity」は、積極的に努力して手に入れる機会のことです。青年らしく積極的に成長の機会を手に入れましょう。青年会議所運動・活動を通じて利他の精神を学び、諏訪圏域の未来の為に考えて行動することで、未来を切り開くことができ、それとともに私たちの人間としての成長も図ることができます。いつの時代も時代を切り開くのは、青年です。私たちがやらなくて一体誰がやるのでしょうか。己の力を信じ仲間を信じ、ふるさとのことを我がことと思い、ひたむきに挑んだ先に、諏訪圏域の明るい豊かな社会の実現へと近づくことができると確信しております。

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